インタビュー

株式会社ウッディホーム

社名

株式会社ウッディホーム

設立年

1986年

従業員数

70名

事業内容

住宅に関する一切の設計・施工

株式会社ウッディホーム
<p>言葉遣いの見直しと「さん付け」の実験</p>

言葉遣いの見直しと「さん付け」の実験

建設業界は、かつては「職人の厳しい世界」「荒っぽい言葉遣い」が当たり前とされてきた時代があります。

しかし、時代は大きく変わりつつあります。 今回お話を伺ったのは、業界に身を置いて40年、現在は業界団体の会長として約270社の企業を牽引する、株式会社ウッディホームの細木社長。かつては「ハラスメント対策研修なんて面倒なもの」と考えていたという細木社長が、なぜハラスメント対策を「普遍的な人間愛の運動」と捉え直すに至ったのか。職人のマナー向上、組織の機能回復、そして従業員の劇的な意識変化まで、同社に起きた組織の変革について詳しくお話を伺いました。

――ハラスメント対策研修を導入されてから、社内にはどのような変化が見られましたか?

細木社長:私どもの会社には10数名の職人がおります。もともと穏やかな人たちですが、言葉遣いが少し荒っぽい者もいました。ハラスメント対策研修導入後は現場のリーダーが率先して注意を促し、丁寧な言葉遣いをするよう指導を徹底しています。まだ若い社員への呼び捨てにするような場面が少し残ってはいますが、確実に改善の兆しが見られています。

  ――それは、建設業界全体の傾向でもあるのでしょうか。

細木社長:そうですね。私も独立して40年になりますが、時代はまったく変わりました。今の時代、いくら技術が良くても「怖い」「愛想がない」という会社は、お客様から遠ざけられてしまいます。文化的に古い、荒っぽい態度を続けていれば、次の現場ではもう使ってもらえません。「現場でもそんな古いやり方は通用しない。お客様を大切にして、顧客満足度を上げていこう」と会社を挙げて伝え続けているので、今ではマナーを正して頑張っています。

――社内では、お互いの呼び方を「さん付け」に変えられたそうですね。

細木社長:はい。実は、一種の実験として「さん付け」を広めています。最初は私自身、少し違和感がありました。これまでは若い新卒の社員に対して、どうしても「君(くん)」や呼び捨てで呼ぶことが多かったですからね。 しかし、いざ「〇〇くん」から「〇〇さん」に変えてみると、自然と相手に対して敬意を持って発言できるようになるんです。呼ばれた側も決して悪い気はしませんよね。世の中的にも「さん付け」は主流になりつつありますし、私自身もだいぶ身についてきました。これは非常に良い取り組みだと実感しているので、来年には正式に組織全体へ広げていきたいと考えています。

中間管理職が機能し始めた組織

――ハラスメント対策を進める中で、業務の基本である「報連相(報告・連絡・相談)」にも変化があったと伺いました。

細木社長: ええ、恥ずかしながらこれまでは、社長である私が社内にいると、社員が直接私のところへ相談や報告に来るという状態が続いていたんです。 そこでここ2〜3年の間に、それぞれの役割分担を明確にし、組織的なルートを徹底しようと改革を進めてきました。ハラスメント研修の浸透とも相まって、今では私がフロアにいても、社員が直接私のところに相談に来ることはなくなりました。まずは直属の上司に話を上げ、そこから中間管理職を通して私のところへ上がってくる。ようやく「中間管理職が適切に機能する組織」へと生まれ変わりました。

――まさに研修の大きな成果ですね。

組織のパワーを失わないために「縦のつながりの、より上の上司(斜め上の上司)」に相談してもいいルールにしています。
解決しなければより上の階層の上司に相談する。最終的には社長が相談に乗る。
社長に相談しても解決しなければ、また最初の上司へ相談する。
このサイクルを2,3回まわして解決せず「納得いかない」となれば転職したほうがいいかもしれない(笑)。
同じ役職や自分の部下や後輩へ不満や愚痴を言えば、組織のパワーが失われていくため、このルールを作りました。

――その他に、組織のインフラとして導入されたものはありますか?

細木社長: 外部の相談窓口を設置しました。これは完全にプライバシーが守られている仕組みで、社長である私にも誰が何を相談したかといった詳細は(緊急や重篤な場合以外は)一切報告されません。しかし、この「完全に秘密が守られている」という実績と安心感があるからこそ、社員が守られ、健全な組織体制が維持できているのだと感じています。

社員の変化から実感した「人は変われる」という事実

――今回の取り組みの中で、特に個人の変化について、象徴的なエピソードがあれば教えてください。

細木社長:マイナス思考の社員がいたんです。何か注意をされるとすぐに「もう辞めます」と言い出したり、「あちらの会社に行こうかな…」といったことを口にしたりしていました。 私はその社員の上司に対して「頭ごなしに否定するような言い方はしないように」と指導した上で、私自身が何度も本人と面談を重ねることにしたんです。上から目線ではなく、本当に本人やそのご家族が幸せになってほしいという想いを胸に、まっすぐに本人の「良い面」を見て話をしました。

――具体的には、どのような言葉をかけられたのでしょうか。

細木社長: 彼にはこう伝えました。「ここを辞めて他の会社に行っても、あまり環境は変わらないよ。世の中に理想の会社なんてないんだ。今のままでいるのか、それとも評価される人になって報酬もあげたいのか。本当に幸せになる人は、環境のせいにするんじゃなくて自分を変えていける人だよ。この環境の中で、自分が率先してみんなのために頑張る生き方を選んだ方が、どこへ行っても幸せになれる。一緒に幸せな生き方をしていこうよ」と、何度も真剣に語りかけました。

――その後のご本人の様子はいかがですか?

細木社長: 驚くべきことに、本当に変わったんですよ。今では仕事もバリバリと意欲的にこなしています。あんなにマイナス思考だった人が、ここまで前向きに変わってくれた。これは私にとっても、会社にとっても大きな「希望」となりました。

<p><strong>根底にあるのは「人間愛」。これからの建設業界へ伝えたいこと</strong></p>

根底にあるのは「人間愛」。これからの建設業界へ伝えたいこと

――素晴らしいエピソードですね。社長がそこまで真摯に向き合えたのは、やはりハラスメント研修での学びが影響しているのでしょうか。

細木社長: 間違いなくそうですね。業界団体のリーダーを務めている関係で、私のもとには多くのハラスメント研修の情報が来ます。お恥ずかしい話、かつての私は口も良くなかったですし、自分自身がパワハラと言われてもおかしくないような面をたくさん持っていました。最初は「ハラスメント対策なんて面倒なルールだな」と冷めた捉え方をしていたんです。 しかし、研修の本質を学ぶうちに感動しました。「なんだ、ハラスメント対策というのは、単なる罰則や規則の押し付けじゃない。根本にあるのは『人を大事にする』『お互いの人格を認め合う』という人間愛、そのものなんだ」と気づかされました。だからこそ、人間は変わっていけるし、誰にでも価値があるという普遍的な運動なんだと確信したのです。

――その想いは、今後は社員の皆さんへも直接伝えていかれるのですね。

細木社長: 実は、これまではここまで熱く社員に語ったことはありませんでした。ですが、今こうしてインタビューでお話ししながら、やはりこの根本の想いを、これからはもっと社員に直接伝え続けていかなければならないなと強く感じています。先ほどの彼の劇的な変化こそが、そのアプローチが正しいという何よりの「実証」ですから。 これからの建設業は、単に現場で作業をするだけでなく、丁寧さやサービス業的な思いやり、気配りといった高い次元のコミュニケーションが求められます。ハラスメント対策を「人を大切にする文化づくり」として完璧に機能させることができれば、建設業界はもっと魅力的な場所に変わるはずです。まずは自社から、そして業界全体へ、この「人を大切にする組織づくり」のバトンを繋いでいきたいと思っています。

インタビューを終えて

細木社長のお話からは、ハラスメント対策が単なる「守りのリスクマネジメント」ではなく、組織の風通しを良くし、従業員の可能性を最大限に引き出す「攻めの組織改革」であるということが強く伝わってきました。 40年のキャリアを持つ経営者が自らの非を認め、自らを変革し、そして社員を「人間愛」を持って信じ抜く。この姿勢こそが、これからの時代に選ばれる企業の、真のハラスメント対策のあり方なのではないでしょうか。

(聞き手:日本ハラスメントリスク管理協会  金井唯、インタビュー日2026年7月14日)

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