コラム

  • その他
  • 職場のハラスメント

社内恋愛が終わった瞬間、周囲を巻き込んでドロドロに…企業は介入すべきか?

「社内恋愛」は昔からよくある話です。

同じ部署で長時間を過ごすうちに距離が縮まり、恋愛に発展することは自然な流れとも言えます。
しかし、中には破局してしまう恋愛もあります。

オフィスという逃げ場のない空間。感情がこじれたまま同じ空間で顔を合わせ続けることは、本人だけでなく周囲の社員にとっても大きなストレスとなり、「職場の空気を壊す爆弾」に変わりかねません。

ここでは実際に見られる「社内恋愛破局後、関係者を巻き込んでしまった事例」を紹介しつつ、企業として取るべき対策を考えてみます。

*名前はすべて仮名です
 
▶相談員としてのスキルを身につけたい方はこちら

事例1:別れた途端に業務連絡が滞る

営業部の宮城さん(先輩)と山形さん(後輩)は同じチームで交際していました。
2人が仲の良い時期はチーム全体も和やかでしたが、別れた途端に空気が一変。
チームは業務連絡をチャットで行っていましたが、山形さんは宮城さんからのメールやチャットを無視するようになり、顧客対応が滞る事態になりました。
難しいお客様の対応でミスをしてしまい、結果的に上司が間に入り、先方に謝罪を行う羽目になりました。
 
個人の事情、感情を業務に持ち込み、顧客トラブルに発展することもあります。

事例2:周囲を巻き込んだ悪口や噂話

総務部の立川さんと営業部の千葉さんが破局した後、立川さんは同僚に「千葉さんの浮気が原因」と吹聴。
千葉さんは「いやいや、立川さんの依存が重すぎた」と反論しました。
2人の勤務する会社は40人ほどの規模です。噂は一気に、詳細まで広がってしまいます。
結果的に総務部の一部と人事部の一部が対立するような構造になってしまいました。
最近入社した社員からは「人間関係が煩わしい」「仕事しにきているのに、なんなんだこの会社は」と退職希望者が出てしまいました。
 
私的な感情が職場に波及し、人間関係の分断に繋がり、離職リスクにまで高まった例です。

事例3:別れ話が「ハラスメント訴え」に発展

研究開発部の高知さんが香川さんに別れを告げた後、しばらくして高知さんがしつこく復縁を迫るようになりました。
最初は「向こうから別れを切り出したのに。まあ私は復縁には応じないけれど」と放っておいた香川さんも、次第にエスカレートするLINEや呼び出しに恐怖を覚え、
人事部に相談しました。結果、セクハラ・ストーカー行為として社内調査が入り、高知さんには出勤停止処分が下されました。
 
以前、恋愛関係にあったからと、しつこく絡んだり、そのときの関係性が続いている認識でコミュニケーションを取ろうとすると「ハラスメント問題」へと発展する可能性があります。

なぜ社内破局は「面倒くさい」のか

1.逃げ場がない:同じオフィス、同じ部署では毎日顔を合わせざるを得ない。
2.周囲の目がある:一度噂が広まると「二人はどうなった?」と興味本位で見られる。
3.仕事と感情の境界線が曖昧:連絡を返す、報告するなど業務上必要な行為が私情に左右される。
 
これらの条件が揃うため、社内恋愛が破局すると当人同士も居心地が悪くなり「周囲を巻き込む爆発力」を伴うこともあります。

企業が取るべき予防策

1.服務規程やコンプライアンス指針に「社内恋愛」に関する内容を盛り込む

社内破局もそうですが、社内恋愛そのものを禁止するという考え方があります。

例えば就業規則に「社内恋愛禁止」の規定を盛り込んでいる企業もあります。

ただし、恋愛は個人の自由であるものです。

社内恋愛により懲戒処分となっても、無効だ、と訴えれば無効になる可能性が高いでしょう。
重要なのは「風紀を乱す」「業務に支障が出る」ことをしていないか、という点です。
 
たとえば、服務規律に
 
1従業員は、職務上の同僚や上下関係にある者、顧客・取引先等との私的交際により、公正な職務執行や会社の信用を害してはならない。

2従業員は、勤務時間中において、業務に支障を及ぼす過度な私的接触・私語等を行ってはならない。

3前各項に違反し、職場秩序を著しく乱した場合は、懲戒事由となることがある。
 
などと禁止ではなく「害してはならない」という表現や、「上下関係」「顧客・取引先」を対象を明示、限定して注意喚起をしても良いでしょう。

服務規程や就業規則に含まれると考え、コンプライアンス指針として社内へ周知することも考えられます。

2.相談窓口を「恋愛トラブル」にも開く

相談窓口をハラスメントに限らず広く開放しましょう。

社員の多くは「恋愛のことなんて会社に相談できない」と思っていることでしょう。

「〇〇さんと別れたので会社に行きたくないです」のような相談が来ても「会社に言うことではない」と一喝せず、話を聞きましょう。

破局が引き金となり、心や体に傷を負っていたり、ストーカー被害に合っているかもしれません。業務に支障をきたしている状態かもしれません。

もし深刻な場合は、すべてを窓口で対応するのではなく、産業医や場合によっては警察や弁護士に連携する必要もあります。

本人にとっては、ようやくたどり着いた窓口かもしれません

3.管理職は「火消し役」として

破局後の二人が同じ部署にいる場合、上司は二人の微妙な関係性が組織に広がらないようにできるだけ早く手を打つことが必要です。
「大人なんだから自分で解決して」と放置すると、問題は確実に悪化します。
 
管理職に求めたいことは
 
・兆候の早期把握
「チームの雰囲気がぎくしゃくしている」「一部の社員が特定の人と距離を置き始めた」など、恋愛や破局の影響による空気の変化を早めに察知する。

・秩序維持への働きかけ
「職場では業務に集中しよう」「周囲に迷惑をかけないようにしよう」と公私を区別する姿勢を示す。

・相談窓口へのつなぎ役
本人に直接解決を迫らず、必要に応じて人事・相談窓口へ橋渡しする。
 
ことが挙げられます。

ただし、当人同士の恋愛に関する内容について直接指導することは避けましょう。過度にプライベートに関わることはパワハラの個の侵害にもなりかねません。
あくまでも、職場秩序や業務遂行に関わる行為への注意(勤務中の過度な私語、私的メールなど)を行う立場ということを抑えましょう。

 

まとめ

社内恋愛は必ずしも悪ではありません。むしろ成就すれば「職場で生涯の伴侶を見つけた」ことになります。

しかし、破局したときのダメージは計り知れません。業務停滞、職場分断、ハラスメント訴えに発展することがあります。

企業としては「恋愛そのもの」をコントロールするのではなく「その後のトラブル」をいかに未然に防ぐかを意識することが重要です。

経営層や管理部門、管理職は「職場の恋の行方」を冷静に見守りつつ、火種を最小化する仕組みを整えておくことが良いでしょう

 

▶相談員としてのスキルを身につけたい方はこちら

————————————————————————————————–

【執筆者】

代表理事 金井絵理

 

【プロフィール】

2021年に一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会を設立し代表理事に就任。「ハラスメントを解消し品性のある組織つくりを目指す」を理念としている。上場企業や自治体などで職場のハラスメント対策研修を行い、現在はハラスメント対策研修ができる講師の養成や、ハラスメント相談員の養成に注力している。

日本キャリアデザイン学会 正会員/国立大学法人小樽商科大学商学部企業法学科卒業/早稲田大学大学院 経営管理研究科 人材・組織マネジメント モジュール卒業(MBA)

この記事をシェアする
FacebookX

お問い合わせ

個別研修を行いたい、社内規定を改定したいなどのご相談・執筆依頼・その他
こちらからお問い合わせください。