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「知らなかった」では済まされない 2026年10月義務化、就活ハラスメント対応の要点

2026年10月義務化へ 浮き彫りになる「企業と学生の認識の落差」

2026年10月1日、改正男女雇用機会均等法が施行され、「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置」がすべての企業に法的義務として課されます。

これまで「望ましい取組み」とされてきたものが、明確な義務へと格上げされたことの意味は大きく、方針の明確化と周知、相談窓口の設置、適切な対応体制、事後対応、プライバシー保護の5つを整えなければ、行政指導・勧告、企業名の公表、20万円以下の過料に加え、民事上の使用者責任を問われる可能性もあるのです。

 

2026年9月8日、当協会主催で実施した就活ハラスメントウェビナーでは、この法改正を受けて、見過ごせないことは「企業と学生の認識の落差」とご紹介しました。

 

▶動画のアーカイブをご覧になりたい方はこちら
https://share.hsforms.com/10yFM_V5TS_2Z8tiv4hS2Sgsxma3

 

厚生労働省の調査によれば、就活中にセクハラを経験したと答えた学生は31.9%にのぼる一方、過去3年間に「相談があった」と回答した企業はわずか0.7%にとどまります。被害がないのではなく、単に「見えていない」だけです。この暗数の存在こそ、体制整備を急ぐべき最大の理由と言えるのではないでしょうか。

OB・OG訪問やSNSも対象に。「外部委託任せ」では防げない実務の盲点

対象範囲の広さにも注意が必要だと思います。

採用面接や説明会だけでなく、インターンシップ、教育実習、OB・OG訪問、さらにはSNSやオンライン上のやり取りまでが「求職活動等」に含まれます。指針は「通常の就業場所で行われるものに限らない」と明記しており、社外・就業時間外に行われることの多いOB・OG訪問やSNS上のやり取りは、対応が手薄になりがちな盲点であると思います。行為者に「ハラスメントの意図がなかった」としても、求職者が実際に苦痛を感じ、就職活動に支障が生じた事実があれば、就活セクハラと判断され得ることも押さえておきたい点です。

 

また、実務上よくある誤解が、「外部委託すれば安心」という発想です。弁護士や社労士、EAP等に相談窓口を委託しても、実際に対応してもらえるのは多くの場合「聞き取り」までで、事実調査・一時保全措置・是正措置・再発防止の実行は結局、自社の役割として残るわけです。したがって、外部の有無にかかわらず、社内に「事実調査から是正措置までを回せる実務体制」を持つことが不可欠となります。個人的には、中小企業であれば、無理に外部委託を前提とせず、社内設置型を軸に据え、対応できる人材を育成する方が現実的な場合も多いと考えています。

組織のガバナンスが問われる「初動対応5つの鍵」と二次被害の防止

具体的な初期対応としては、

①窓口情報の能動的な開示
②秘密保持と不利益取扱いをしないことの明言を含む対話ルールの策定
③受付から調査担当への引継ぎまでの標準化されたフロー
④男女双方が選べる複数名体制と、プライバシーが守られる面談環境
⑤行為者への個人連絡禁止の文書指示や産業医・EAP等への連携経路の確保

の5点の設計が鍵になります。

 

特に、事実調査が終わらないうちに「加害者と断定する発言」や「会社の法的責任を全面的に認める謝罪」を行わないことは、担当者が見落としやすい重要な留意点であると思います。

 

実際のトラブル事例が示すのは、「個人間の問題」として処理し記録を残さなかったことや、加害者側の弁明のみを鵜呑みにして被害者への独立したヒアリングを怠ったことが、SNS炎上や採用ブランドの毀損に直結していることです。また、内定を盾にした沈黙の強要は、それ自体が二次被害(セカンドハラスメント)にあたるとされる点も、社内で共有しておきたい認識です。初動対応の巧拙が、そのまま企業の法的責任と評判リスクを左右するといっても過言ではないのです。

 

就活ハラスメントへの対応は、単なる法令遵守にとどまりません。求職者という「社外の存在」にも安心して声を上げてもらえる仕組みを持つことは、組織の信頼性そのものを社会に示す機会でもあると捉えて、10月の施行を前に、担当者個人の努力や勘に頼るのではなく、組織のガバナンスとして体制を構築できているか、今一度点検していただきたいと思っています。

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【執筆者】

相談員養成講座 特任講師 平澤 知穂

 

【プロフィール】

2000年にコーチとして独⽴、研修講師として活動開始。 2つの⼤学で通算14年間⼤学⾮常勤講師を務める。 企業や⾃治体、医療法⼈などにおいてハラスメント防⽌の活動を⾏い、2022年には個⼈のハラスメント年間相談対応が 600件を超えた。厚⽣労働省の設置するハラスメント相談窓⼝や、法務省の刑事施設における矯正教育関連プログラムの ファシリテーターを経験している。

 

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