コラム

  • 職場のハラスメント

一歩ずつ進める「みんなの女性活躍」へ 〜誰もが心地よく働ける職場づくりと、ヒントにしたい自治体の取り組み〜

「女性活躍」。毎日のように耳にする言葉です。多様な視点を取り入れて、会社をはじめ組織を元気にするために、日本全国の企業にとって避けては通れない、とても大切な取り組みです。

しかし、現場からはこんな本音や戸惑いの声も聞こえます。

 

・「女性管理職を増やす、という数字ばかりを気にして、中身が追いついていない気がする……」

・「産休明けの社員に良かれと思って配慮したつもりが、相手のモチベーションを奪うことになってしまった」

・「女性ばかりが優遇されているようで、男性社員から不満の声が聞こえてくる」

 

せっかくの素晴らしい取り組みも、ボタンの掛け違いから、職場のギスギス感や、思わぬハラスメントを生む原因になってしまいます。

 

本コラムでは、誰もが無理なく笑顔で活躍できる職場づくりのポイントを解説します。

また、取組のためのヒントとして、2026年7月に施行された「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例(以下、条例)」の事例も参考にしながら、紐解いていきます。

 

1. 女性活躍の現場で気をつけたい「ハラスメントリスク」

女性活躍を進めるプロセスでは、悪気はないのに起きてしまう「すれ違い」や、無意識の思い込みがハラスメントに発展してしまうことがあります。地域や会社の規模を問わず、特に注意したい3つのリスクを見てみましょう。

 

1)「良かれと思って」が招くマタハラ(マタニティハラスメント)

妊娠・出産・育児を迎えた社員に対し、目に見える嫌がらせをすることは論外ですが、最近増えているのは「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」によるマタハラです。 育児から復帰した女性社員に対して、「お子さんが小さくて大変だから、負担の少ない簡単な仕事にしよう」と周囲が勝手に決めてしまうケースがこれにあたります。
優しさ・配慮にも見えますが、本人が「もっとチャレンジしたい」と思っている場合、活躍の機会やキャリアアップの可能性を奪うことになりかねません。


2)職場の古い価値観が生むジェンダーハラスメント

「男のくせに育休を取るのか」「女性ならではの細かい気配りをお願いね」「お茶出しは女性の仕事」といった、性別による役割分担の意識を押し付ける言動をジェンダーハラスメントと呼びます。 女性活躍を推進している一方で、こうした古い価値観が職場に残っていると、社員は窮屈さを感じ、せっかくの能力を発揮できなくなってしまいます。

 

3) 周りの社員へのシワ寄せと「逆差別感」のモヤモヤ

育休明けの社員の短時間勤務、産休・育休で数カ月間の不在。女性が安心して休み、復帰できる職場を目指したいものの、その分の業務が他のメンバーに集中することがあります。フォローする側には「どうして自分ばかりにしわ寄せがくるのか」という不満が溜まってしまうことも。また、現場への説明が不足したまま女性登用だけを進めると、男性社員や若手社員から「性別だけで評価されているのでは?」という誤解(逆差別感)が生まれ、職場の冷ややかな空気へと繋がってしまいます。

 

2. 参考にしたい取り組み:東京都が応援する「無理のない女性活躍」

こうした課題に対して、非常にきめ細やかなサポートを行っているのが東京都です。

東京都で施行された条例の指針が非常に参考となります。

指針では「女性が活躍できる環境の整備に関する基本的な考え方」が示されています。

 

1)事業者の主体的な取組を推進する

女性の就業者数は増えたが、意思決定層への登用は低い水準に留まる。働く場における女性の個性や能力がまだまだ十分に活かされているとは言い難い状況にある。この状況を変えるため、事業者が女性の活躍の必要性を認識し、環境整備に主体的に取り組むことが必要である。

 

2)「性別に関する無意識の思い込み」への関心と理解を深め、誰もが活躍できる 環境の整備に取り組む

育児休業の取得率や取得期間は女性が男性を大きく上回るなど、働き方や制度の利用状況に未だ男女間に差がある。こうした背景の一つに社会に根強く残る「家事・育児は女性がするものだ」、「男性は仕事をして家計を支えるものだ」などの性別に関する無意識の思い込みが影響している可能性がある。就業者一人ひとりがこのことに気付くことはもちろん、組織の意思決定層や人事管理や業務管理を行う立場にある方は性別に関する無意識の思い込みについて、関心と理解を深めていく必要性が高いと考えられる。

 

3)家庭生活と職業生活との両立に関し、就業者の意思を尊重する

就業者を取り巻く環境は、家族構成や配偶者の有無、家庭生活による役割分担などそれぞれ異なる。働き方に対する考えも様々であることから、その選択に当たっては本人の意思が尊重されるべきもの。就業者本人の意思が尊重されず、本人の意向に反して一方的に組織の制度が運用されることのないよう、条例では、その趣旨を明確に定める。

 

これらは、女性優遇を意図しているものではありません

事業主の責務として

・特定の性別に偏らない組織づくり

・就業者に係る男女間の格差の解消

・女性特有の健康課題への配慮

・女性の尊厳を傷つける行為の禁止と就業者に対する措置

についても明記されています。

 

参考:東京都雇用・就業分野における 女性の活躍を推進する条例 に係る指針

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/sangyo-rodo/2026-0601-jokatsu-guideline

 

3. 皆が心地よく働くための「3つのステップ」

無意識の思い込みや、マタハラやジェンダーハラスメントのリスクをなくし、皆が心地よく、納得感を持って働くには組織はどう対応したら良いのか。
以下に具体的な3つのステップを提案します。

 

ステップ1:「女性のため」ではなく「みんなのため」と伝える

まずは会社全体で、「女性だけを優遇するのではない」というメッセージを共有することが大切です。「誰もがライフイベント(育児・介護・自身の病気など)を迎えても、安心して働き続けられる会社にするために、まずは女性活躍から始めていこう」と説明することで、全社員の納得感が深まり、逆差別感や不満によるハラスメントを未然に防ぐことができます。

 

ステップ2:評価のものさしを「時間」から「成果」へ

「遅くまで残業している人が偉い」という古い空気が職場にあると、時間の制約がある社員は肩身の狭い思いをします。 仕事の評価を「どれだけ長く働いたか」ではなく、「限られた時間でどんな成果を出したか」という、効率性やチームへの貢献度を重視するものさしに変えていくことが大切です。

 

ステップ3:お互いの事情を思いやる「心理的安全性」を高める

日頃から「お互い様」と言い合える風土づくりが、ハラスメントを未然に防ぐ最大の特効薬です。 定期的な研修などを通じて、「男だから」「女だから」「育児中だから」といった主語をなくし、誰にでも「見えない事情(家庭の状況や体調など)」があることを理解し合える「心理的安全性」の高い職場を目指しましょう。

 

  1. まとめ:全員が主役になれる職場へ

女性活躍推進は、女性のためだけのイベントではありません。

それをきっかけに、業務の無駄を省き、誰もが定時に帰れるようになったり、お互いをフォローし合えるようになったりする、「職場全体のアップデート」なのです。

施策を進める上での大切なことは、ルールで縛ることではありません。何のためにやるのかの目的設定です。
「誰もが不当に傷つかず、性別やライフステージに関わらず、安心して自分の力を発揮できる温かい環境を守ること」は抑えつつ、皆さまの職場でも目的・目標の設定から始めてはいかがでしょうか

以下、自社の現在値を診断するツールもお試しください。

 

女性活躍推進度診断ツール

https://josei-suishin.metro.tokyo.lg.jp/

 

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【執筆者】

代表理事 金井絵理

【プロフィール】

2021年に一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会を設立し代表理事に就任。「ハラスメントを解消し品性のある組織つくりを目指す」を理念としている。上場企業や自治体などで職場のハラスメント対策研修を行い、現在はハラスメント対策研修ができる講師の養成や、ハラスメント相談員の養成に注力している。

精神保健福祉士/日本キャリアデザイン学会 正会員/国立大学法人小樽商科大学商学部企業法学科卒業/早稲田大学大学院 経営管理研究科 人材・組織マネジメント モジュール卒業(MBA)

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