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心身が疲弊している相談者への対応 ~具体的なアドバイスと注意点~

体調が思わしくないと思うような部下や、従業員等(相談者)がいた場合、あるいは 従業員等(相談者)から「体調が良くない」と言ったような発言があった場合はどのように対応すれば良いでしょうか。

 

ハラスメントの相談業務に携わっている人は、こうした質問にどのように答えればよいか考えを整理しておく必要があります。

 

結論から言うと、

まずは、当該相談者の体調についてよく聞いてください。そして、医師の受診を進めていきましょう。

体調の様子は、具体的に睡眠や食欲の状態を聞きます。

不眠症は、一般的に睡眠問題と呼ばれ、例えば入眠障害や中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害が30日以上続き、さらに日中に倦怠感や意欲低下、集中力の低下や食欲低下等の症状が発現する症状が起きているものを指します。

食事の乱れは、人によって様々ですが、一般的な例として暴食・偏食・夜食・食事のスキップがあげられます。

 

暴食: ストレスから感情を紛らわせようとして、過剰に食べてしまう。

拒食: ストレスから食欲が減退し、食事量が減ってしまう。

偏食: 特定の食品にしか手をつけなくなり、栄養バランスが崩れてしまう。

夜食: 夜遅くに間食をしたり、食事をしたりする。

食事のスキップ: 食事の回数を減らしたり、食事を抜いたりする。

 

これらの乱れは、単独で現れることもあれば、複合的に現れることもあります。

これを目安にし、また、相談者の睡眠のバランスが崩れていると感じたら、医師の受診を進めていきます。

 

「睡眠や食欲については、メンタルにもよくない影響を与えかねないので、身体的問題は早めに解決することをお勧めしたいです。専門である医師のアドバイスを受けるのも大事なことだと思います。一度受診をされてみてはいかがでしょうか」というように。

メンタルクリニックなどへの受診を拒むようであれば、まずは内科の受診をして医師からアドバイスをもらうように伝えてみてください。

ハラスメント相談員の立場で、これを相談者に提示したことは、面談記録にちゃんと残しましょう。

 

では、明らかな体調不良があり、自覚をしている相談者に対して、相談員としてはどのような接し方が望ましいでしょうか。

例えば、相手から「死にたい」と打ち明けられたら、あなたはどのような感情を覚えるかをイメージをしてみてください。

 

…多くの方は、非常に強い不安を覚えるでしょう。その不安から、色々な言動を「つい」してしまうことがあります。

そこで、今回は「初期対応で特に気をつけたい対応」についてご紹介します。

 

1.話をそらさないこと

自殺のような深刻な相談を受けた場合、相談員に強い不安が湧き上がり無意識に話をそらそうとしてしまうことがあります。

しかしここで話をはぐらかしたり 全く関係のない話をしたりしてはいけません。よく話を聞きましょう。

「バックトラッキング」などの手法を活用して、傾聴します。

 

2.批判的な態度を取らないこと

例えば、「家族のことも考えて」「死ぬなんてもったいない」「自殺は、あなたが自分の苦しみかた逃げたいだけの身勝手な行為です」「長い人生の中でたいしたことではないから」

(これらは実際に言われたことがあるという発言例を拾って、加筆修正しました)

こうしたセリフは、相談者の気持ちを批判していると受け取られるかもしれませんので、禁物です。

やはり、バックトラッキングや相槌など、相手の言葉を受け取ることに専念しましょう。

 

3.世間の常識を押し付けないこと

世の中には色々な「常識」と呼ばれる考え方があります。

しかし、相談員が向き合うべきは相談者であり、世間の常識ではありません。

特に相談者が死にたいとまで考え追い詰められている心情の時に世間の常識を持ち出しても、功を奏すことはないでしょう。ましてや「押し付ける」のは禁物です。

 

4.安易な励ましはしない

励ますこと自体を否定しているのではなく、「大丈夫、日はまた登るんだから」「いつか思い出になる日が来るよ」「神様は見てくれているから、きっとよくなるよ」など、安易な励ましはお勧めしません。相談員の役割は、ただひたすら本人の気持ちに耳を傾けることです。

以上に留意しながら 相談窓口の業務を進めると良いでしょう。

クライアント企業様で、相談を受ける立場の方に、ぜひ、こうした情報を提供できるように日頃から準備しておきましょう。

 

ハラスメント相談員としての日々の活動をしている皆さまを私どもは応援しています。

 

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【執筆者】

相談員養成講座 特任講師 平澤 知穂

 

【プロフィール】

2000年にコーチとして独⽴、研修講師として活動開始。 2つの⼤学で通算14年間⼤学⾮常勤講師を務める。 企業や⾃治体、医療法⼈などにおいてハラスメント防⽌の活動を⾏い、2022年には個⼈のハラスメント年間相談対応が 600件を超えた。厚⽣労働省の設置するハラスメント相談窓⼝や、法務省の刑事施設における矯正教育関連プログラムの ファシリテーターを経験している。

 

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