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ハラスメント対策研修が効力を発揮しないとき

研修を主な事業としている法人として「ハラスメント対策研修が効力を発揮しないとき」というタイトルでコラムを書くことは勇気がいりました。

ただ、お客様の貴重な時間やお金を無駄にしないためにも、成果が出にくい場合を示しておきたいと考えました。また、その対策案も示しておきます。

 

企業等から、研修を通して「乱暴な言葉遣いをやめさせたい」「部下指導の際に馬鹿にするような言動をやめさせたい」などお話をいただくことがあります。

また、研修後に受講者の方から「〇〇はハラスメントにあたりますか」と「ハラスメントにならない注意の仕方を教えてください」などの質問をされることが多くあります。

出来る限り企業等のご要望にお応えし、受講者の疑問をクリアにして、良い組織つくりの一助となりたいと考えています。

 

一方で「研修を受けただけでは求めている成果を出すことは厳しい」と感じることがあります。

研修は万能ではありません。

 

以下、「厳しい」と考えるケースについて述べます。

 

実践しない

どんな研修でもそうですが、実践しないと意味がありません。

特にハラスメント対策研修の場合、「具体的な指導方法を教えて欲しい」「他にどんな良い方がありますか」などの質問を多くいただきます。

研修後、しばらく経って「研修ではたくさんのご質問をいただきました。その後、部下への指導はいかがですか」「ご自身の指導に何か変化はありましたか」など会話をすると「いえ、指導する場が特にないのでしていません」と回答する方が少なくないのです。部下がいれば、何等かの指導はあるはずです(叱ることだけでなく、承認することも指導)。

やり方を知りたい。正解を知りたい。でも実践はしない。それでは意味がありません。

 

実践を促すには、上司面談や評価面談で部下への指導について振り返る機会を設け、自分が行った具体的な指導方法について報告をしてもらうこと等が考えられます。

 

マネジメントの基礎知識がない

上司が部下に対して好き嫌いで接し方を変えたり、特定の部下にしか情報共有をしない人、そしてこのような人が多くいる組織が存在します。なぜ上司と部下という階層があるのか、上司の役割は何なのかそれらの理解がないままハラスメントに絞った研修をやっても、浅い理解になったり誤解が生じると考えます。

たとえばパワハラの定義にある「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」が何か判断できないことが考えられます。そうすると定義や基準を伝えても「自分は問題ない」「出来ている」と歪んだ理解になる可能性があります。

 

まずは、マネジメントとはなにかの研修から始めると良いかもしれません。会社として上司には何を期待していて、何をしてもらわないと困るのか、職務分掌などを見ながら、経営者や幹部など社内の人が講師となり伝えていくことも良いでしょう。

 

ハラスメントに対する固定概念が強すぎる

研修後アンケートに目を通すと、体感で40名に1名ほど、ハラスメントに対する誤解をしていると思われるコメントがあります。

下記は実際にあったコメントを編集しています。

「パワハラはある程度許容された方が良いと思う。その方が成長が早いし、伸びる人もいる」

「嫌だと感じたらハラスメントになる。結局言ったもん勝ちですよね。」

「1人の社員のミスを取り上げて、全員に喝入れることはパワハラの観点では良くないのかもしれないが、時間の効率という意味ではいいと思う。」

ちなみに、パワハラは許容された方が良い、という言葉は部下の立場にいる人から出たものです。

「自分は怒鳴られたり、足蹴りもされたが、それで成長できたし、むしろ感謝している。自分も厳しく後輩に接している」そのようなことも仰っていました。

これがパワハラの連鎖となります。

 

パワハラをはじめ、ハラスメントに関する知識はベテラン社会人となる前、若手のうちから理解をすることが必要と感じます。

ハラスメントは許さないということを企業のトップが発信したり、社内資料を展開するなどして、入社時から啓蒙するような取組をされると良いでしょう。

 

 

ハラスメント対策というピンポイントの研修を行うのも良いですが、求める成果を出すには他の課題にも目を向ける必要があると思います。多面的に組織を見て、研修の設計をしていきましょう。

 

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【執筆者】

代表理事 金井絵理

 

【プロフィール】

2021年に一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会を設立し代表理事に就任。「ハラスメントを解消し品性のある組織つくりを目指す」を理念としている。上場企業や自治体などで職場のハラスメント対策研修を行い、現在はハラスメント対策研修ができる講師の養成や、ハラスメント相談員の養成に注力している。

日本キャリアデザイン学会 正会員/国立大学法人小樽商科大学商学部企業法学科卒業/早稲田大学大学院 経営管理研究科 人材・組織マネジメント モジュール卒業(MBA)

 

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